平成25年度入学式

2013.04.08

平成25年度言語文化学部、国際社会学部ならびに大学院総合国際学研究科、留学生日本語教育センターの入学式が、4月4日、本学アゴラ?グローバルの「プロメテウス?ホール」において行われました。

入学式では、混声合唱団「コール?ソレイユ」による大学歌合唱の後、第一部では言語文化学部入学生398名、外国語学部編入生32名、留学生日本語教育センター学部進学留学生、研究留学生63名の入学が許可されました。第二部では、国際社会学部入学生392名、大学院総合国際学研究科博士課程(前後期)入学者164名の入学が許可されました。

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学長式辞

学長として東京外国語大学を代表して、皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。
また、本日、研究講義棟101マルチメディアホール等にてこの式辞をお聞きいただいている保護者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
本日ここに、言語文化学部398名の新入生、国際社会学部392名の新入生、外国語学部編入学32名の新入生、大学院総合国際学研究科博士前期課程?博士後期課程入学164名の新入生、留学生日本語教育センター63名の新入生をお迎えしております。希望に満ち溢れる皆さんを前にして、身も心も引き締まる思いです。

さて、皆さんの新しい学び舎(まなびや)となる東京外国語大学は、1857年(安政4年)に開校された蕃書調所(ばんしょしらべしょ)にその起源をさかのぼることができます。わが国における「外国学foreign studies」の歴史は、本学の歴史とともに始まったと言っても過言ではありません。
その後、1873年(明治6年)に英独仏露清の5学科からなる東京外国語学校の建学がなり、紆余曲折を経て、1897年(明治30年)、当時の高等商業学校の附属外国語学校として創立され、1899年(明治32年)、東京外国語学校として独立します。
こうした本学の草創期には、内村鑑三、新渡戸稲造、中江兆民といった日本近代史に大きな足跡を残した人物を数多く輩出しております。いま皆さんが着席されているこのプロメテウスホールの座席の一つ一つに、本学の歴史に大きく貢献した方々の名前が刻まれていますので、ぜひご覧になってください。

さて、本学はその後、1949年(昭和24年)の新制大学の発足とともに、東京外国語大学として新たなスタートを切ることになります。当時は、12学科からなる外国語学部でした。それが2012年(平成24年)からは、外国語学部が改編されて、言語文化学部と国際社会学部の二学部体制となり、世界14地域27言語をコアとして全地球をカバーする、「外国学foreign studies」の大学に生まれ変わりました。
言語文化学部は、世界のさまざまな地域の言語や文化の学習に重点をおき、日本を含む世界の言葉や文化に精通し、優れた職業的能力を備えた人材の養成をめざしています。
国際社会学部は、世界諸地域の政治?経済?社会とその歴史についての知識を深めて、グローバルな視点から問題を考え解決することができる実践的能力を備えた人材の養成をめざしています。
大学院総合国際学研究科は、世界諸地域の言語や文化、歴史、社会をめぐる総合的な視野をもった高度国際教養人?職業人の育成をめざしています。

ところで、本学では、それぞれの学部?大学院における専門教育とならんで教養教育を重視しています。皆さんが身につけるべきこの教養を、本学は「世界教養global liberal arts」と名づけています。そこで私は、なぜ「global」という形容詞がつけられているのかについてお話ししたいと思います。

「グローバル」という言葉が流行りだしたのは、皆さんが生まれたころだと思います。地球温暖化や酸性雨などが顕在化し、人類は地球規模で環境問題を考えなければならないという認識が高まり、1992年には環境と開発に関する国連会議、いわゆる「地球サミット」が開かれました。そのころから、”Think globally, Act locally”、つまり「地球規模で考え、地域から行動を」ということが盛んに言われるようになりました。ローカル(地域社会)の課題とグローバル(地球社会)の課題とが密接に絡み合っているのが21世紀のグローバル社会です。皆さんには、本学の学び舎で、物事の全体像を地球規模でとらえる「俯瞰的視野」を培ってもらいたいのです。
「グローバル」にはもう一つの意味があります。それは「全体的」ないし「総合的」ということです。学問が細分化?高度化し、科学技術がいちじるしく進展している現代社会のなかで、「技術」への過信が深刻な悲劇を人類社会にもたらすことは、一昨年の大震災と原発事故から私たちがしっかりと学ぶべき教訓です。ですから、人文学、社会科学、自然科学、応用科学の諸学問領域を横断する「総合知global knowledge」を身につけて、グローバル社会のさまざまに交錯した複雑な仕組みを分析し、物事を的確に判断する能力をもたなければなりません。
もうひとつ「グローバル」という言葉を冠した理由があります。それは、教養を、ややもすると芸術や文学的素養ととらえてしまうことへの批判からです。芸術や文学が大事なことは言うまでもありませんが、教養とはもっと幅広いものです。教養にあたる英語のリベラル?アートを明治期に西周(にしあまね)が「藝術」と日本語に訳したところからある種の誤解が続いていると思いますが、リベラル?アーツのもともとの意味は、「自由人の諸技術」であり、古代ローマにあっては奴隷とはちがう自由人がもつべき技芸、つまり実践的な知識をさしていました。中世ヨーロッパでは「自由7科」として、「文法、修辞学、弁証法、算術、幾何、天文、音楽」が、専門職に進む前の学問として修得を求められました。
学問の細分化と専門化が果てしなく続く21世紀グローバル社会の時代には、「教養liberal arts」とはグローバルなもの、つまり「哲学、歴史、社会科学、自然科学、芸術、教育、外国語、環境」などの学際的かつ実践的な知識でなければならないのです。皆さんは、それぞれの夢と志をいだいて本学に入学されました。ここで、世界教養と専門知識とをしっかりと身につけて、それらを皆さんの夢に結びつけてください。そして近い将来、皆さんが、現代の自由人、つまり地球市民global citizenとして活躍されることを願ってやみません。

最後になりますが、留学生日本語教育センターにご入学の皆さんにも一言述べさせていただきます。

Lastly, I would like to say congratulations to our new students here at Japanese Language Center for International Students.
JLC is a leading Japanese language educational institution established in 1970. It has been under the Joint Usage Center for Education, since last year.
It is my most sincere wish that your Japanese language abilities blossom while here at JLC - a place in which ideas and culture are expressed in Japanese. May you take the language and culture learned here at JLC and move on to your own area of expertise.
Finally, I hope that all of you may become a bridge to Japan and your own place in the future, and I wish that all of you fill this part with great honor and dignity.
Thank you.

これをもちまして、私の式辞といたします。

2013年4月4日
東京外国語大学長 立石 博高

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