追悼 池端雪浦先生
2023.09.25
本学第10代の学長(2001~2007年)を務められた池端雪浦先生が、本年9月20日にお亡くなりになりました。女子大以外の日本の国立大学で初めての女性学長でもありました。
池端先生が学長を務められた6年間は、全国の国立大学が法人化するまさにその時期でした。激動の時代に小舟で乗り出した東京外国語大学を、21世紀COEの獲得や、世界の主要大学とのアジア?アフリカ研究教育コンソーシアムの設立などによって主導され、人文社会分野で優れた研究力を備えた大学としての地歩を固められました。私たちの大学は、池端先生が示された方向性を堅持することで、今を迎えていると言っていいと思います。
池端先生が、東京大学東洋文化研究所、愛知大学を経て、本学に赴任されたのは1981年のことです。本学アジア?アフリカ言語文化研究所教授として日本の東南アジア近代史研究を先導されると同時に、1992年に本学に博士後期課程が設置されて以来、多くの若手の指導に当たられました。学長になられてからも、かつて指導した皆さんとの時間をなにより楽しみにされていました。
私にとっても東洋史の大先輩である先生との思い出は尽きませんが、なにより、筋を通すことの大切さをいつも説かれていた先生の、凛としたお姿が忘れられません。その一方で、学長室のおやつにはお饅頭をかかさず、おしゃれで、リラックスした時にはお茶目な表情を浮かべられておられました。女性研究者のパイオニアとして厳しい時代を歩んでこられた先生ですが、長崎のご家族がご遺影に選ばれた写真からはそうした穏やかな先生のご様子が伺え、悲しみの中で心が少し和む思いでした。
池端先生、どうか安らかにお休みください。本当にありがとうございました。
-
東京外国語大学長 林佳世子