ご入学おめでとうございます!(2019年度入学式)
2019.04.06
2019年4月6日(土)、2019年度入学式が本学アゴラ?グローバル プロメテウス?ホールにおいて行われ、言語文化学部360名(編入学16名含む)、国際社会学部385名(編入学14名含む)、国際日本学部82名、大学院総合国際学研究科博士前期課程/後期課程177名、計1,004名の新入生が入学を許可されました。
2019年度入学式学長式辞
皆さん、ご入学おめでとうございます。本日、ビデオ配信により別教室でご覧になっている保護者の皆様にも、心からお喜び申し上げます。
さて、4月1日から皆さんがその一員となった東京外国語大学は、150年に及ぶ歴史を通じ、日本の近代化、国際化、グローバル化に大きな役割を果たしてきた大学です。そして、今、大きな転機を迎えている世界と日本において、その真価が問われる時代を迎えています。
本学が行ってきた、世界の言語?文化?社会の教育?研究は、世界の多様性を基礎としています。多様性があるからこそ、それぞれを理解することが必要であり、その間を取り持つ人材にも大きなニーズがありました。実際、世界の各地で出会うことのできる皆さんの先輩たちは、世界の言語?文化?社会の多様性を体得し、世界と日本をつなぐ重要な役割を果たしています。
しかし、1つの地球社会がうまれつつある21世紀の現在、多様性という現実は、世界や日本の様々な場所で、「問題」として噴出しています。人と人が実際にまじりあって生きていくとき、共通の基盤をどう作り出すのかは、大きな課題だからです。それには、事実上、分離して別々に暮らすか、一方が他方を吸収する同化しかないと、悲観的な立場を述べる人もいます。解決が必要な多くの課題が山積するなか、多文化共生という私たちの夢は、言うは易く、行うは難し、というのが現実です。
また、私たちが自然発生的だと思いがちな多様な言語や文化は、多くの場合、国家単位に管理され、力をもった強者による文化の独占も進んでいます。私たちが学ぶ世界の言語?文化?社会の「多様性」とは、いったい何なのか。それ自身が、自明の存在ではなくなってきているといえるでしょう。
こうした状況に呼応して、他者を排除し、自分たちだけで、居心地よく過ごすことを求める自国ファースト、あるいは、自分たちの文化を極端に自賛する排外主義の風潮が広まっていることは、皆さんも感じておられるとおりです。
しかし、ここに集う皆さんには、決して、そのような偏狭な生き方をしてほしくはありません。
皆さんは、生物多様性という言葉を聞いたことがあろうかと思います。生き物が多種多様であることが、生命の維持と繁栄の基礎となっていることを表す用語です。文化についても、同じことがいえるのではないでしょうか。多様性を忌諱する風潮に抗い、隔離や同化以外の道を見出していかなくてはなりません。それは、おそらく、双方の変化を前提にした、新しい形での共生の形を追求することになるでしょう。
そのために、私たちは何ができるのでしょうか。親しい人々と接するなかでも、人と人の付き合いには、相手に対する正しい知識と、相手を理解する力が求められます。より大きな違いのある人と接するには、彼らについてより多くを学び、対話するすべを身につけなくてはなりません。そして、交わりあいの中で、自分自身が変わっていくという覚悟も必要です。
東京外国語大学は、長きにわたり、このような多文化共生のための教育を実践してきた大学です。そして、多文化共生の実現が、世界や日本でさらに差し迫った課題となっている今日、皆さん一人一人に、この問題を広く深く学んでいただきたいと願っています。地球市民として、人々の共生に貢献する未来に向け、皆さんが、一日一日歩む道を、教職員全員でサポートしてまいります。どうか、高い目標をもち、成長していってください。皆さんのこれからの4年間が、実り多いものとなることを期待しています。
2019年4月6日
国立大学法人東京外国語大学長 林佳世子