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「『金閣寺』における「父の不在」」 余 筱秋
"The Absence of Fatherhood in Yukio Mishima’s novel
‘The Temple of the Golden Pavilion" YU Shiau-Chiou
和文要旨
本稿では『金閣寺』の主人公における父親と家に対するコンプレックスを検証し、父性の不在と再生の図式について考察した。
戦後の日本社会において理想的な新しい父親像を見出していなかった「空白」を補填しようとするさまざまな父性物語は、三島由紀夫の中期以後の主要作品で繰り返されたテーマの一つとして考えられる。『金閣寺』において、主人公による金閣寺の美に対する崇拝には、それを父親の精神的な遺産として継承しようとする自己規定、さらに、その自己規定から生じる父親との同一化への欲求が見られる。父親からの精神的な遺産、つまり金閣寺に対する崇拝がやがて二重のジレンマと化すことが、主人公が金閣炎上を選ぶ心理的プロセスとして描かれていることを考察した。
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