多文化教育研究プロジェクト 連続セミナー「多文化共生としての舞台芸術」 第1回「現代的演出」
日時
2021年4月26日(月)18:00?19:30
場所
Zoomウェビナーでのオンライン開催
講師
平田栄一朗(慶應義塾大学文学部教授)
演劇学?ドイツ演劇研究。
1997年慶應義塾大学文学研究科博士課程満期退学後、1998年から2000年までベルリン?フンボルト大学に在籍。博士(文学)。慶應義塾大学准教授を経て2012年より現職。
主な著訳書:『ドラマトゥルク』(三元社)、『在と不在のパラドックス――日欧の現代演劇論』(三元社)、『文化を問い直す――舞台芸術の視座から』(共編著、彩流社)、『Theater in Japan』(共編著、Theater der Zeit社)、『ニーチェ 三部作』(翻訳、論創社)、『バルコニーの情景』(翻訳、論創社)、『パフォーマンスの美学』(共訳書、論創社)、『ポストドラマ演劇』(共訳書、同学社)。
内容
演出家の社会的意義は共生社会の幕開けと密接に関わっています。ヨーロッパ演劇界に著名な演出家が登場し始めた19世紀末から20世紀初頭は、多様な人々が共に暮らす大衆社会が出現し、電信電話などのメディアコミュニケーション時代が到来し、肉眼では見えないものを映し出すレントゲン技術が発明された時代でした。現実世界が多様化?複雑化したことに的確に応えるべくして、演劇界でも演出家という職分が必要になりました。演出家はまた19世紀末に始まった映画と同様、俳優との共同作業を行う点において映画監督と似ていますが、いくつかの点において大きく異なるところがあります。
本セミナーではヨーロッパ演劇史を踏まえながら、舞台芸術における演出の必要性と意義について解説します。
備考
- 一般公開
- 参加費無料
- 事前申込制
こちらのフォームよりお申し込みください。
主催
東京外国語大学 総合文化研究所
共催
東京外国語大学 語劇支援室
お問い合わせ先
沼野恭子 nukyoko[at]tufs.ac.jp ([at]を@にかえて送信してください)
講演報告
第1回では、慶應義塾大学文学部教授でドイツ演劇研究者の平田栄一朗氏が、現代的演出をテーマに、ヨーロッパ演劇史を踏まえながら、舞台芸術における演出の必要性と意義について話された。
多文化共生を目指すには、自分は自分であり他人とは異なるという「切り離し」の意識を持った上で、自分はどのように多様な世界と関わるべきか考えることが重要で、芸術作品を鑑賞し解釈することによって自分自身の価値観を確認することができると平田氏は述べる。なぜならば、芸術作品は専門家がどのように解説しようとも、個人個人によって自由に解釈可能であるからだ。
セミナー後半では、異なる演出家が手がけた『エミーリア?ガロッティ』(1772年初演)を2パターン紹介して、それぞれに良さがあり、同じ戯曲をめぐって異なる見方の併存が可能であることを示した。
同一の古典を解釈した多様な「現代的演出」を鑑賞して考えることは、多様な見方が存在するということを実感させてくれるだけではなく、あらゆる物事が既に誰かに解釈された形態で届けられるメディア社会に生きる我々に適切な判断力をもたらすのではないかと平田氏は締めた。