中川裕教授最終講義 ~フィールド写真展同時開催~
最終講義
「音の有標性を超えて:グイ語内部から音の珍しさ?周縁性?脆さを読み直す」
- 日時:2026年1月24日(土)14:00-15:30
- 場所:東京外国語大学 研究講義棟115教室
講義概要
クリック子音は、世界の言語を見渡すと通言語的に稀で、一般に「有標な」音として扱われてきました。しかしグイ語の内部に目を向けると、クリックと非クリックのあいだの「珍しさ」「周縁性」「脆さ」の関係は、従来の有標性のイメージとは必ずしも一致しません。講義では、まず有標性という抽象的な概念が、音の通言語的頻度や個別言語内の語彙頻度?テキスト頻度とどのように結びつけられてきたかを簡単に整理したうえで、グイ語と他のコイサン諸語におけるクリックと非クリックの頻度分布、擬音語と「普通の語彙」とのあいだでの分布差、幼児のクリック習得、そして舌小帯短縮症や発音器官損傷といった器質的障害および老齢による歯の消失におけるクリックと他の子音の保たれ方の違いを論じます。さらに、文化による音の組織化という視点から、神話のトリックスターが特異な発音を用いる場面で、クリックと非クリックの交替がどのように用いられているかを取り上げ、周縁的?破格とみなされる発音が、必ずしもクリック側にあるとは限らないことを示します。長年の現地調査にもとづくこれらの観察から、有標性を普遍的な一元的尺度とみなすのではなく、個々の言語内部で組み合わさる複数の指標(頻度?使用領域?変化/消失のしやすさなど)を通して、音の「珍しさ」や「周縁性」「脆さ」を捉え直す視点を提案したいと思います。
備考
- 一般公開?予約不要
- 最終講義にZOOMによる参加を希望する方は、以下のリンクより登録してください:
https://us02web.zoom.us/meeting/register/RZVYtPxeSFOb4xCweN7VDQ
また、当日の詳細についての情報はこのイベント案内で更新されます - 16:00-18:00に懇親会を予定しています。参加ご希望の方は12/31までにポスター掲載のQRコードまたは下記リンクから必ず登録をお願い致します。参加できない方でもメッセージを送りたい方は、同リンクより受け付けております。
https://forms.gle/8GuHREqyyoj2a3jb6
問い合わせ先
hiroto.uchihara[AT]tufs.ac.jp(内原洋人)
※[AT]を@に変えて送信してください。