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2010年11月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2010年11月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 今月は、イタリアで語られるbutoh「舞踏」について、つまりジャッポーネという「異国」の地に生まれたアヴァンギャルド?ダンス、コンテンポラリー?ダンスについて考えさせられたひと月だった。
 まず、ボローニャ大学側の指導教員であるチェルヴェッラーティ教授のご尽力でボローニャ近郊の街レッジョ?エミーリアにて勅使川原三郎による演出、振付け作品Obsession(初演2009年,フランス)を鑑賞することができた。シュルレアリスムのフィルムに着想を得た作品であり、勅使川原と佐東利穂子による激しく強烈な踊り世界の見事さは言うまでもなく、いっときたりとも気を緩められないような、観客を押し黙らせるかのような演出であった。一方で、同日に鑑賞したイタリア人による劇団サーニャ?カンパニー(Compagnie Caterina et Carlotta Sagna)の講演Nuda vita(Nude life, 初演2010年,フランス)では、「台詞」と「振付け」が何の境も無く交錯しながら劇場空間に共存しており、それは客席を巻き込んで観客をも喋らせてしまうかのような、舞台と客席の関係において前者とは全く対照的な作品であったこともまた興味深い。
 そして、シチリアを拠点に活動している舞踊家大西小夜子氏がチェルヴェッラーティ教授の授業に招かれ、報告者も講演を聴く機会を得た。大野一雄、土方巽両舞踏家の系統を継ぐ大西氏は現在世界中から集まるダンサーたちにbutohを指導しており、"new butoh"という新しい定義を提案している。日本の文化、日本人の身体性に密着したbutohが外国人によって自由に解釈され、その踊り手の内にあるものが外へ放出されて踊られるとき、そこには全く新たなbutohが生まれるからだという。
 また、演劇における三島由紀夫についてのシンポジウム(Mishima, mon amour)においても土方巽による「禁色」(初演1956年,日本)が紹介され、butoh、芝居、三島のテキスト、三島の人柄等々様々な角度から日本人の世界感が論じられた。土方の暗黒舞踏や大野の舞踏、または勅使川原の劇団KARASらは、80年代にヨーロッパを魅了し高く評価された結果、以降butohとなって日本に逆輸入されたといえる。西洋の目からみたbutohにおける身体についての考察を学ぶことは、イタリアのアヴァンギャルド?ダンスを研究する報告者にとって非常に意義のあることである。ここボローニャ大学には大野一雄アーカイヴが2001年に設立され、「舞踏」の研究が非常に進んでいる。このアーカイヴ設立の立役者であるカジーニ?ローパ教授に直接お話を伺う機会を得られたのも今月の大きな収穫であった。
 研究については、12月に東京外国語大学ITP-EUROPAとボローニャ大学との共催でボローニャ大学において開催される国際シンポジウムの準備に専念した。報告者は、指導教員と面談しご指導を仰ぎながらテーマ決定を行い、「踊る身体と飛ぶ身体--マリー?タリオーニからジャンニーナ?チェンシへ--」(Il corpo danzante e il corpo volante da Maria Taglioni a Giannina Censi)というタイトルのもと研究発表をさせていただく予定である。

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写真:勅使川原三郎<Obsession>の公演会場、テアトロ?アリオストのプロセニアム?アーチと桟敷席。

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