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2010年9月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2010年9月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 東京外国語大学ITP-EUROPAプログラムから派遣していただき、ボローニャ大学との共同学位授与制度のもと、今月よりここボローニャで研究を進めている。ボローニャ大学では、芸術?音楽?演劇映画学科(Discipline delle Arti, della Musica e dello Spettacolo、通称DAMS)に所属し、舞踊史がご専門のチェルヴェッラーティ(Elena Cervellati)教授に指導を仰ぐ。
 派遣ひと月目の今月は、この街で暮らしていくために必要なあらゆる手続き、申請等に多くの時間と労力を割いた。しかし、ひと手間で済むはずの事柄にふた手間も三手間もかかるのが常であるこの国にありながら、歴史ある大学を誇る街ボローニャは留学生への対応にも慣れているようで、無事に全ての雑事を片付けることができた。
 同時に、研究に関しても、課題に専念できる環境と生活リズムをすぐに得て、順調に進めている。慣れない街での暮らしはなにかと心落ち着かないものだが、騒音に気をとられず研究に集中できたのはこの街の図書館の充実による所が大きい。入手したい文献を追いかけるようにして大学付属図書館5館、市立図書館2館を利用しながら各図書館のそれぞれに異なる利用方法を習得した。新たに気になる資料が出てきたとき、それが必ず手を伸ばせば届くところにあるという環境は、無駄なく研究を進められるというだけでなく、孤独に課題と向かい合う背中を力強く後押しされるような気持ちになる。
 このひと月の成果は、「第二次未来派」批評の流れを改めて俯瞰できたことである。報告者の研究テーマである未来派の舞踊は、第二次未来派と区分けされる時代に実現されたものであり、その評価と時代区分は現在も研究者によって意見が別れている。そのため、博士論文の前提として、第二次未来派の扱いを確定しなくてはならない。既に、この議論については、未来派評価が安定する80年代から未来派創立100周年を迎えた今日までの批評家ごとの見解を中心にまとめてあったが、このひと月をかけて、第二次未来派がさもなかったものかのように扱われた第二次世界大戦直後の貴重な文献にあたり、ファシズムに傾倒したという史実から未来派が嫌悪され、現代美術史からも等閑視される傾向にあった戦後の未来派批評の流れを非常に興味深く追った。現在の課題としては、これら大戦直後の第二次未来派の問題を早急に研究ノートにまとめることである。
 必要な事務手続きを終えた10月からは、上記の課題に取り組みつつ引き続き研究に専心し、健康を保ちながら穏やかな心持ちで過ごせるように心がけたい。

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写真:市立アルキジンナージオ図書館(Biblioteca comunale dell'Archiginnasio)があるアルキジンナージオ宮(Palazzo dell'Archiginnasio)入り口

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