2011年9月 月次レポート(佐藤 貴之 ロシア)
ITP-EUROPA月次レポート(9月)
報告者:佐藤 貴之
派遣先:ロシア国立人文大学
9月9日、成田を出発し韓国経由でモスクワに到着。大学寮での生活を開始する。
寮は大学構内にあり、基本的に外出する必要は少ないため、非常に落ち着いた環境の中、研究に集中できるといえる。また、本大学の寮はすべて二人一部屋の形をとっているが、学部生、留学生、大学院生同士で住まわせるなどの配慮を大学側がとってくれるため、生活スタイルがあわない等のトラブルもない。しかし、寮自体のキャパシティーは非常に少なく、すでにどこも満杯とのことだ。これから留学予定の学生は各自でアパートを見つけるなどしなくてはならないだろう。また、来年度、当大学に留学希望者がいれば、大学寮の手配はなるべく早めにしておくことをお勧めする。
さて、現在の状況だが、入学手続きと研究の両方を同時並行で進めている。しかし現在は、ビザの切り替え(ロシアではまず短期滞在のビザを発行し、入国後に長期ビザに切り替えるシステムをとっている)があるため、パスポートを大学に提出してしまっている。返却は来月上旬と聞いているが、パスポートがないと図書館の利用が制限されるなどの不都合がある。学生証の発行にもまだ時間がかかるため、現在は身分証がない状態にある。
現在主に通っているのは、モスクワ州ヒムキ市図書館通りにあるロシア国立図書館付属博士論文閲覧館である。この図書館はモスクワ市内ではなく、郊外にある点に注意しなくてはならない。市内の地下鉄で最北の「レチノイ?ヴォグザール」という駅から、344番の乗り合いバスに揺られてやっと到着という、非常にアクセスの悪い場所だ。モスクワ中心部から片道1時間は見ておく必要がある。
しかし、この施設のメリットは大きい。ここでは、これまで執筆された博士論文を無料で閲覧できる。パソコンの持ち込みが許可されているので(スキャナーやカメラは不可)、論文を読みながら、重要な個所を書き写すという作業を一日中続けるのが日課となっている。ビュッフェも館内にあるため、食事のために外出する必要もなく、早朝から夕方まで作業できるのが非常にうれしい。このペースで作業が進めば、重要な博士論文のチェックは11月までにこなせると思われる。
また、9月15日には訪露中の東京外国語大学指導教員の沼野教授、ロシア国立人文大学側指導教員のレクマーノフ教授、筆者の三人で研究に関する懇談会を開いていただいた。この話し合いの結果、指導方法、研究方法、テーマ、研究成果の発表など、様々な点について意見交換をすることができ、非常に有意義な会となった。両教授には改めて御礼の言葉を申し上げたい。近々、レクマーノフ教授からコロムナ教育大学の教授を紹介されることとなっている。コロムナ教育大は筆者の研究しているボリス?ピリニャーク研究の牙城としてしられるモスクワ郊外の大学である。来月はこの大学に伺い、筆者の研究を披露して意見を仰ぐとともに、定期的に開かれている「ピリニャーク研究会」への参加許可を頂戴してくることを目標としたい。
現在は論文「ピリニャーク創作における日本の表象」(ロシア語)を執筆しているが、脱稿次第、研究機関誌への掲載に尽力する。