2012年2月 月次レポート(太田悠介 フランス)
ITP-EUROPA月次報告書(2月)
太田 悠介
今月の10日から12日にかけて、アラン?ブロッサ教授とかつての教え子たちが中心となって開催した研究会合宿に参加しました。場所はフランス東部のフランシュ?コンテ地方に位置し、スイス国境にもほど近い小さな村フェルタンです。今回の研究会の主題は「人民、ポピュリズム、人口(Peuple, Populisme et Population)」で、題材としてエルネスト?ラクラウ『ポピュリストの大義』(La Raison populiste, Seuil, 2005)が指定されました。
この著作は「ポピュリズム」という語がきわめて否定的な意味で用いられる現状を押さえたうえで、ギュスターヴ?ル?ボン、ガブリエル?タルド、ジークムント?フロイトら「ポピュリズム」批判のいわば源流に立ち返るというかたちをとっています。そのうえでラクラウは、彼らが実際には人民の構成の問題をそれぞれの仕方で提起していたこと、したがってその思想が統治の側の論理から発せられる通俗的な「ポピュリズム」批判だけにはとどまらない射程を備えていることを明らかにします。このように、批判の対象でしかないはずの「ポピュリズム」から、人民の構成という政治にとっての原初的な問題を腑分けして取り出すところに、この著作の理論的な貢献があると考えられます。ラクラウが「ポピュリスト」であることの「大義あるいは理由(rea