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2012年5月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

ITP-EUROPAレポート(5月)

水沼 修

 指導教員によるゼミ「文献学(Critica Textual)」は,5月末で講義が終了しました。同ゼミで行なってきた校訂作業(Garcia de Resende, Breue memorial dos pecados e cousas que pertence ha cofissa)も最終段階に入り,現在は,全体的な見直し作業を参加者全員で行っています。また,出来上がった校訂本をインターネットで公開すべく,掲載先の検討も行われています。

 同ゼミの参加者は,言語学が専門ではない学生が多く参加していたため,これまでの講義では,中世語の特徴や言語変化等が話題になることはそれほど多くなかったのですが,終盤の講義では,先生が現在行なっている研究について,いくつかお話しくださいました。先生の研究で用いられる手法の一つに,あるテキストに見られる言語特徴に関し,これまで明らかになっている言語変化のプロセス(-eoと-eaの母音連続,語末鼻音の-aoへの変化,動詞の二人称複数形における-d-の消失,過去分詞-udoの-idoへの変化,語末に-lを含む名詞?形容詞の複数形,所有詞の体系など)と照らし合わせることで,そのテキストが書かれた年代や,作者または写字生を推定するものがあります。自分が今行なっている「複合時制の発展」についても,その全貌を明らかにするような調査を行うことで,この種の研究に寄与することができればと考えています。

 先月に引き続き,今月も,指導教員と面談を行いました。副指導教員を交えた前回の面談では,「所有」を表す本動詞としてのhaverとterの交替についての議論が中心でした。当地滞在もそろそろ終盤を迎えていることもあり,今回の面談は,博士論文で取り扱う事項(調査項目)や,使用するコーパス等について,先生と再度確認を行いました。博士論文では,複合時制の発展を扱ったこれまでの研究で多く見られるような形式的側面(過去分詞の性数変化等)に特化した分析だけではなく,意味的発展のプロセスにも留意した調査を行いたいと考えています。しかしながら,今回先生と話し合った結果,ひとまず,これまで採取した例文を対象に,形式的側面に見られる変化について整理することになりました。その結果を,先行研究の記述と比較した上で,今後の作業について再度話し合いを行うことになっています。
 
 当地は気温も暖かくなり,街も賑やかさを取り戻してきました。派遣期間も終わりに近づいていますが,最後まで気を引き締めて研究に精進したいと思います。

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