2012年7月 月次レポート(横田さやか イタリア)
月次レポート 2012年7月
博士後期課程 横田さやか
派遣先:イタリア、ボローニャ大学
夏期休暇に入る今月は大学院のセミナーは開講されず、ひたすら論文執筆に専念することができた。先月、博士論文の章構成を本学における指導教員、ボローニャ大学における指導教員、ならびに演劇専攻のコーディネーターを務める教員に提出しご指導を仰いだことが励みになり、より本腰を入れて執筆を進められたと感じている。イタリア未来派の舞踊を研究テーマとしている報告者は、博士論文においてこの主題を舞踊研究の視点から考察することを試みる。同時に、戦後から未来派創立100周年にかけて、それぞれの芸術分野において、ときには政治思想に絡み、多様に議論されてきた未来派研究の側からの考察も疎かにされないことは、報告者の博士論文のひとつの強みであると思う。今月は、第一章第一節と第二節の執筆を進めた。第一節では、創立者F. T. マリネッティが、注目すべき身体感覚を表現し続けており、舞踊家でもなければ振付家でもなかったにしても、その敏感さによって彼が新しい舞踊の可能性への洞察眼をいかに備えていたかを詳らかにしていく。次に、第二節では、当時のダンサーたちの繰り広げるパフォーマンスが未来派アーティストたちを刺激した事実と、その踊る身体から着想を得ることで生まれた絵画、彫刻、舞台装置、舞台美術などを考察する。この節は、第一章において当時隆盛を極めたモダン?ダンスと未来派との相互影響関係を考察するひとつの要となる論考である。
さて、今月は予報通りの高温が続き、快適に研究に集中できる環境を探し求めてあちこちの図書館を梯子する羽目になった。もちろんこれは予想していたことで、短縮開館ではあるが、空調設備の整った図書館を利用し、論文執筆に励んだ。そうはいっても、やはり日差しの強さと連日の高温の影響は受けるようで、意志に反して体力がまったく追いつかない現状も認めざるを得ず、あらかじめ決めておいた量の執筆を終えることができなかった。8月こそはなんとか体力を落とさずに臨まなければならない。イタリアでは、真夏となれば街から人がすっといなくなり、それぞれヴァカンスへ発っていくのが習慣であり、今月はふたこと目にはヴァカンスの予定を訪ね合う会話が聞かれるようになった。報告者が、論文を書きたいからヴァカンスをする気分にはならないと話したところで、理解されないか、かわいそうだと思われてしまうのは、休暇を取ることへの意識の違いとしておもしろく受け止めているが、あまりの暑さで常に頭がぼうっとしているのも確かであり、効果的な息抜きの仕方については、学ぶべきかもしれない。博士論文執筆作業は、頭と身体との両方において、まさに体力勝負であることを改めて実感させられる。