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2013年10月 月次レポート(説田英香 ドイツ)

10 月レポート

説田英香
派遣先: ドイツ フライブルク大学

 10月の上旬は、博士論文の執筆を主に行い、1978年の帰国促進政策方針に関する報告書と、1983年の「帰国促進法」によって帰国した外国人労働者と家族のその後の状況についてまとめた。またそれに関連して、帰国する労働者を対象としていた、1970年代前後の自立支援政策について調べた。この自立支援政策は考察対象時期から外れており、また政策の目的が違うという理由もあり、博士論文では言及程度に留める予定であった。しかし、当時の政策が、1978年の帰国促進政策方針に強く関連しているのではないか、という疑問が強まってきた。従って、先行研究が比較的存在する、トルコ出身労働者を対象とした自立支援政策を中心に調べてみた。しかし、当時そこに帰国促進政策の意図がどれほどあったのか、という最も肝心な点についてはわからなかった。これについては、次回の文書館訪問の際に調べる必要がある。当政策の本来の目的は発展途上国に対する支援であることからも、帰国促進政策に直接関連していたと、現時点では言いがたい。しかし、今後「帰国促進政策」の定義を広げ、両者の政策の関係性を慎重に調べて行く必要性を感じた。従って、外国人労働者の「帰国」の概念と対局の位置にある「定住」をキーワードに、60年代の連邦政府内の議論についても調べた。これらの調査結果は、前史として博士論文の第一章に組み込む予定である。
 フライブルク大学では10月下旬に新学期が始まった。それに際し、研究進捗状況およびそれを踏まえた最新の博士論文研究計画についての指導が、受入指導教員であるヘルベルト先生によって行われた。論文の構成について変更および補足する箇所がいくつか挙がったため、論文の再構成を行った。また学期中には博士学生を主な対象とした上級ゼミが、毎週水曜日、ヘルベルト先生によって開催される。報告者も博士論文執筆活動の傍ら、当ゼミに出席することとなっている。研究をするにあたっての幅広い知識および視点を獲得するため、当ゼミでは例年、主に欧米各国から招かれた研究者および博士学生による研究報告が行われてきた。それに対して今学期以降は、報告者の対象を論文執筆段階にある博士学生により絞っていく方針であるということから、博士論文執筆に直接関わる技術を学ぶ事ができると期待している。今月には第一回目のゼミが開催され、ベルリン自由大学の学生による、博士論文テーマについての報告が行われた。報告は、1939?1948年のソ連占領下におけるポーランド系ユダヤ人の歴史についてであった。当時のポーランド系ユダヤ人の経験を考察に組み込んでおり、個人の伝記や作家による当時の状況を描いた作品を史料としてどのように扱うのか、という点がとりわけ議論の対象となった。テーマはもちろん、時代や作品の保存環境等の状況も異なるが、ドイツの移民政策史を博士論文のテーマとする報告者にとっても、この議論は大変参考となった。

 以上

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