2013年6月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)
月次レポート(6月)
水沼 修
当地では,学期も終わりを迎えつつあり,講義やセミナーのほとんどが,テスト週間に入っています.派遣者は,本学期の授業へは参加していないため,自宅または図書館等で作業を行なっています.
今月は,本年12月頃に予定されている,リスボン大学博士課程の中間報告に向けての準備を進めました.先行研究については,ポルトガル語の複合時制の発展を個別に扱った研究を中心に調査を行い,これらについては一通りまとめる作業を終えてあります.先月の指導教員との面談において,これらに加え,フェルナン?ド?オリヴェイラ(Fernao de Oliveira)や,ジョアン?デ?バッロス(Joao de Barros)などの,ポルトガル語の初期の文法書における記述や,16世紀以降現在に至るまでの文法家の記述について話題が上ったため,これらについても一通り目を通すことにしました.
また,博士論文では,ポルトガル語の直説法現在完了(o Preterito Perfeito Composto)が,現代語の意味的価値を有するに至るまで,どのような変遷をたどったのかについて明らかにすることが,課題の一つに挙げられています.
これまでは,歴史的変化を扱っている研究を中心に調査を行って来ましたが,先月の面談において,意味論がご専門の指導教員から,現代ポルトガル語の直説法現在完了に関する最近の研究について,いくつか紹介していただきました.特に,「ロマンス諸語」の枠組みにおけるポルトガル語の現在完了の位置に注目しながら,これら研究をまとめる作業を進めていく予定です.
博士論文の調査で使用するコーパスについては,前回派遣時に, 既存の電子化コーパス(Corpus Informatizado do Portugues Medieval: http://cipm.fcsh.unl.pt, Tycho Brahe: http://www.tycho.iel.unicamp.br/~tycho/corpus/, CELGA: http://www.uc.pt/uid/celga/recursosonline/cecppc, CARDS: http://alfclul.clul.ul.pt/cards-fly/index.php?page=downloads等)を中心として,場合によっては,紙媒体の資料も併用することで,指導教員の了承を得ていました.ただし,電子化コーパスで使用されている元の資料について,それぞれのテキストの成立過程(オリジナルか翻訳か,写字生の出生地等)に注意を払う必要があります.今後は,これらの調査や,上で挙げた先行研究の調査に加え,電子化コーパスから抽出したデータの整理も進めて行きたいと思います.
7月に入ると,各種図書館の開館時間も短縮されるため,自宅で作業する時間が長くなると思います.暑い日が続くと思いますが,体に気をつけながら,研究を進めて行きたいと思います.