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2011年9月 月次レポート(村松恭平 スイス)

月次報告書(9月)
村松恭平
 
 新学期が始まった今月は、大学キャンパスやジュネーブ市内が特に若者で溢れ、賑やかであった。9/12からの一週間はオリエンテーション期間で、新入生を歓迎する催しや交流パーティ、各サークル団体の紹介や勧誘等が各地で行われ、ジュネーブ大学の規模の大きさを実感した。
 その翌週には、静かな旧市街の一角にあるIEUG(Institut europeen de l'Universite de Geneve)の校舎で新学期開始の顔合わせと説明会が催され、他のマスターコース入学者や教授陣と交流することができた。毎年の入学者は40名程度であるが、今年アジア人は私一人で、その他の学生はほとんどが欧州各地からの学生である。スイスやフランス、ドイツ、イタリアなど西欧の先進国出身が多いが、中にはポーランドやチェコ、ブルガリアなどからも数名が入学している。このような欧州の様々な国から来た学生達と意見交換ができることは、この地で研究や議論をする上で非常に有意義な点であり、メリットであると感じる。
 尚、この研究所に所属する為にはフランス語の入学試験が課せられる。(今年は9/5に試験が行われた。)事前に入学の内諾は入手できるものの、この試験を突破しなければ登録は認められない。試験内容は学術的な記事の読解や、やや複雑な文法問題、ほぼネイティブスピードの聴解問題がある。試験の難易度は決して易しくはないので、IEUGでの研究に興味がある方には、この点に注意を促したい。(たとえ英語での研究を予定しているとしても、この試験は決して免れない。)
 IEUGでの研究生活は、自分の研究の進歩を最優先とし、例えば"欧州経済統合の理論"(Theorie de l'integration economique europeenne)、"政治的観点からの欧州統合"(L'integration europeenne dans une perspective politologique)、"EUの経済政策"(Economic Policy of the European Union)といった、自分の研究テーマに関連する講義のみを聴講することにしている。他にも興味深い講義はいくつかあるが、それらに出席すれば研究との両立が困難になってしまうため、少し残念ではあるが、優先順位を付け絞らざるを得ない。(講義の多くが"欧州"をキーワードとしたものである。内容は以下のURL参照 : http://www.unige.ch
/ieug/index/Programm2011-2012.pdf
) 
 また、今月は研究指導教員であるM.JOVANOVIC教授にお会いし、研究方針の相談と助言を直接受けることができた。(M.JOVANOVIC教授に関する情報は、以下のURLを参照:http://www.miroslavjovanovic.ch/)ジュネーブ到着前に作成しておいた研究内容?計画書に再度、詳細に目を通していただいたところ、1年の滞在で研究を進めるには内容が多すぎるということで、少なくともジュネーブの滞在中は戦後の欧州経済統合、特に関税同盟に関する思想?歴史的経緯の調査に比重を置いたほうがいいとの助言を受けた。JOVANOVIC教授とは講義を通じても今後、2週間に1度は直接面会できるので、密にコミュニケーションを取りながら、研究を進めていこうと思う。
 研究に関しては、先月のレポートでRAYMOND ARON氏のみ記述を引用した『欧州経済の統合』(原題:L'Unification economique de l'Europe, l'evolution du monde et des idees / edition de la Baconniere, 1957)の、各論者の論点をまとめた。フランスやイタリア、ドイツ、ベルギーなど初期の欧州統合に参加した国家について、統合に関する当時の事情や世論を(論者個々の立場もあるが)客観的な説明を試みている。経済事情は各国に差異があるものの、国家を超えて"欧州"として纏まろうと導く政治家、学者の存在(感)と、第二次世界大戦を経験しての危機感の共有が意思統一の根底にあった。他には、William Diebold Jr, TRADE and PAYMENTS inWESTERN EUROPE (HARPER&BROTHERS,1952)や、Frits Machlup, A History of Thought on Economic Integration (Macmillan Press Ltd, 1977 )を主に参照しながら、目下研究を進めている。

 

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