2011年10月 月次レポート(平賀陽子 フランス)
短期派遣EUROPA月次報告書 2011年10月
平賀陽子
短期派遣EUROPAプログラムの支援により、先月末からパリ第3大学通訳翻訳高等学院(ESIT)に派遣していただいております。パリに着いた頃は夏のような青空が広がっていましたが、ここ数週間で秋の深まりが一段と感じられるようになりました。1か月が経ち新しい生活にも大分慣れ、学校の授業、そして修士研究にも集中して取り組めるようになってきました。
ESITでは会議通訳科の研修生として、日本語科の授業を中心に受講しています。日仏通訳演習、仏日通訳演習は修士1年、2年両方の授業に参加しています。1年次に逐次通訳、2年次に同時通訳というカリキュラムは外語大の通訳コースと同じですが、通訳時間の長さ等、訓練方法には違いもあります。異なるスタイルの訓練の目的を意識し、それを体験できることは、自身の通訳技術向上のみならず、通訳者教育の視点からも貴重な機会であると感じています。
翻訳理論は、通訳科、翻訳科の学生が参加する講義形式の授業ですが、毎回活発な議論が行われています。何か国語もの例文を挙げて議論ができる点は大変興味深く、ESITの大きな特色であると思います。方法論は、会議通訳科の修士1年生全員が受講していますが、学生のレベルの高さ、言語コンビネーションの豊かさは、まさに目をみはるばかりです。通訳技術の基礎だけでなく、パブリック?スピーキングやスピーチの構成についても学ぶ場となっています。また、教養科目として経済学を受講しています。後期には、政治学、地政学、法学といった科目も開講されるそうで、多岐に渡る分野の知識が求められていることがよくわかります。
授業以外の時間で、どの語科も頻繁に集まり勉強会、練習会を開いています。私も日本語科の練習に参加していますが、皆さんの熱心さに大変良い刺激を受けています。
ESITでは、OECDでの仕事の都合によりドノバン先生が退任なさった後、フェルナンド先生が今学期から副学部長に就任されました。新学期前にフェルナンド先生にお会いすることができ、ESITでの通訳?翻訳教育方針、カリキュラムについて説明していただきました。通訳訓練および研究に役立つよう、参加する授業の選択についても助言してくださいました。
修士研究として「環境問題に関する日英仏用語集」の執筆を現在進めています。日本語科の伊藤先生には、環境問題という分野の用語の多さから、用語の整理の仕方が重要であるとご指摘いただき、ESIT翻訳科の定める修士研究の形式も参考になると勧めてくださいました。翻訳科の学生は、修了要件として用例集を提出するそうです。その用例集や作成手順の資料等からも是非勉強したいと思っています。
ESITの図書館には、様々な辞書や用語集があり、特に翻訳科の学生が多く利用しているのを目にします。日本では閲覧できない資料もあり、大変興味深いです。学外の図書館等にも仏英の用語集等が所蔵されており、研究を充実させるため、積極的に利用したいと思います。
授業も本格的に始まりましたので、できる限り多くのことを吸収し、研究に励み、残り2か月を有意義に過ごしたいと思います。
凱旋門(10月初め)