小木曽 智信 OGISO Toshinobu
- 役職/
Position - 大学院国際日本学研究院 元教授(NINJAL)
- 研究分野/
Field - コーパス日本語学
コーパスを使って「壁」を超えた日本語研究を
私はふだん立川にある国立国語研究所で「コーパス」の開発を行いながら、それを使った日本語の研究をしています。コーパスとは、書かれた文章や話された言葉などの大量の言語データをコンピューターに収録し、それに言語研究に必要な情報をつけた大規模なデータベースのことです。これまでに国語研究所で近年公開された1億語のコーパス『現代日本語書き言葉均衡コーパス』をはじめ、いくつかのコーパス構築に携わってきました。最近は、プロジェクトリーダーとして『日本語歴史コーパス』という奈良時代から近現代までの日本語を通時的に研究することのできるコーパスの構築を進めています。
東京外国語大学には週に1日勤務していますが、授業では主に『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を使って日本語の研究を行う方法についての講義?演習を行っています。コーパスを使うことで、これまで主観的に考えるしかなかったり、小規模な調査しか行えなかったりした言葉の研究が、客観性をもって大規模に、それも容易に行えるようになってきました。
コーパスのような電子的なデータはインターネット経由でどこにいても使えるので、海外中の研究者も日本にいる場合と同じような研究が可能になります。また、コーパスのデータにもとづいた実証的な研究を行う際には、日本語ネイティブの直感は必ずしも重要ではありません。むしろ、異なる言語にもとづく発想から、母語話者には思いつかない新しい研究が生まれてくるかもしれません。コーパスができたことによって非母語話者も母語話者と対等に日本語研究を行うことができる環境が整ってきたのです。
こうして地理的な壁も母語の壁も低くなってきたことで、今後の日本語研究は海外の研究者を含んだグローバルな環境の中で進められていくことになると思います。また、コーパスの構築や活用はいわゆる文系理系の壁を超えた学際的な研究でもあります。このように、コーパスを活用することでさまざまな壁を超えた新しい研究が生まれてくるでしょう。国際的な広い視野の下で研究ができる東京外国語大学の国際日本専攻は、こうした研究を進めるにふさわしい場所だと思います。
※国立国語研究所(NINJAL)とのクロスアポイントメント