国際日本学

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教員インタビュー

友常 勉 TOMOTSUNE Tsutomu

役職
大学院国際日本学研究院 准教授
研究分野
日本地域研究、思想史

【English Page】

差別問題だけに留まらずマイノリティを多面的に研究

 私の研究分野の一つは、江戸時代から近代にかけての日本の思想史です。最近では、1960年代から70年代にかけての政治運動、芸術運動、文化運動に関して複数の専門家と一緒に研究会を行っていて、その研究成果を今後書籍にしていく予定です。
 これらの社会運動にはもちろん"protest(抗議)"という意味合いが込められています。同じ意味で、例えば現在でも行われている刑務所の獄中者や死刑囚が権利を求めて行っている活動や、身体障害者が社会生活を送る権利を求める運動と、根底で密接につながっているのではないか。そんな視点から考察を加えています。
 そして研究分野のもう一つが、被差別部落を中心とした日本のマイノリティ研究です。単に差別されてきたという部分だけに焦点を当てるのではなく、歴史的に彼らは地域共同体の中で宗教的?民俗的な役割を果たしてきた側面があります。そこから宗教や芸能にまで幅を広げて研究を行っています。
 最近では、南アジアのダリトと呼ばれる被差別民との比較研究も行っています。そこでわかったのは、日本とインドと地理的には離れていても共通性があることです。両者とも本質的に地域共同体の中で、寺社が扱えない死やケガレといった境界領域を管理することから発しています。例えば、川に動物の死骸が流れてついた時にその処理を行う、あるいは地域でお祭りを行う前にお清めの儀式を行う。実はこういった仕事こそが彼らの本源的な役割であり、そこから皮革の加工や芸能といった二義的な仕事へと発展しているのです。
 このような世界の他の地域との比較研究を行う上で、東京外大は非常に環境が整っています。27の専攻語があるというのは、言ってみれば大学キャンパス内に小さなグローバル社会があるようなもの。そこで他フィールドの研究者とうまく関係性が築ければ、より創造的?生産的な研究が可能になります。
 4月からの大学院博士前期課程国際日本専攻の授業では、江戸時代から64年の東京オリンピックまでの日本の思想史を扱います。ここでお話しした私の研究テーマと合わせて、マイノリティの視点から地域社会の歴史を読み替えていくような試みも行う予定です。
 大学院の博士課程で学ぶ上では、偏見なく物事を柔軟に把握できる力が何よりも求められます。その際に、これまであまり触れたくないと思ってきた分野にも向き合うことが重要です。今まで疎遠だった領域と向き合う勇気をぜひ持ってほしい。そのための姿勢を伝えたり、示唆を与えるのが私たちの役割だと思っています。

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