柴田 勝二 SHIBATA Shoji
- 役職
- 大学院国際日本学研究院 教授
- 研究分野
- 日本近代文学、演劇
歴史や思想を学ぶことで文学研究の視角が拡がる
専門は日本近代文学で、近年は夏目漱石と村上春樹を中心とする研究を主に行っています。
作家は芸術家、表現者であると同時に、一人の市民、社会人でもあります。当然、その生きている時代の影響を受けて、そこで生まれる思考や情感などが作品に織り込まれます。夏目漱石であれば、さまざまな矛盾が露出してくる日露戦争後の時代を生き、英文学者時代に吸収した西洋思想を下敷きとする人間観を取り込みながら、その時代社会の姿を作中の人間関係に託して描きました。例えば『こゝろ』の「先生」と若い「私」の関係は、まさに終焉した明治と始まりつつある大正という新しい時代の関係に照応しています。
村上春樹の場合は、彼自身が全共闘世代で、反体制運動へのシンパシーがある人です。彼の父親が中国の戦場に行っていたこととも関係していると思いますが、初期の『中国行きのスロウボート』から2004年の『アフターダーク』まで、中国への関心が繰り返し出てきます。こうした文脈を考慮に入れつつ作品を読むことで、読解や解釈の拡がりが生まれてきます。
こうした視角の拡がりを得るためにも、留学生?日本人学生ともに院生に対しては常に、研究対象としている作家の作品だけでなく、歴史や思想など人文科学全般をよく学んだ上で研究を行うよう指導しています。博士前期課程の私の授業では、7、8割が外国人留学生なのですが、留学生からは時々思いも寄らない視点を提供してもらうこともあり、教育?研究両面での刺激を与えられています。
そうした点で、本学の国際日本専攻は日本人と違う視点に触れることができるという特質があります。日本文化?文学を相対化しながら、国際的な広い視野を持った研究を行うことができるという点が、他大学にはない大きな特徴だと思います。