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【たふえね×卒業生】地域の声で紡ぐ未来~環境課題の今~「持続可能なバリューチェーンとわたしたちの未来~コーヒーとチョコレートの観点から~」

世界にはばたく卒業生

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取材?執筆:堀 詩(言語文化学部 英語4年)(広報マネジメント?オフィス 学生広報スタッフ?学生ライター)

梅雨にもかかわらず、汗の滴るような真夏日が続いた今年の6月。少しずつ、しかし確実に、私たちを取り巻く地球環境は日々変化しています。持続可能な社会の実現が叫ばれる中、私たちの日々の選択が未来にどのような影響を与えるのか、一度立ち止まって考えてみたことはあるでしょうか。

私たちの未来を考える1つのきっかけとして、2025年6月16日(月)に、本学環境系学生サークル「たふえね」主催によるイベント「持続可能なバリューチェーンとわたしたちの未来~コーヒーとチョコレートの観点から~」が開催されました。

コーヒーを渡す写真

当日は、環境に配慮したコーヒーの流通に取り組む「ONIBUS COFFEE」様よりコーヒーをご提供いただきました。ご協力に心より感謝を申し上げます。

第1部 本学卒業生?関口友則氏によるトークショー「エシカル消費とビジネスは両立するのか?ビジネスパーソンが研究して見えたこと」

今回ご登壇いただいたのは、東京外国語大学卒業生(外国語学部英語専攻卒)である関口友則氏です。関口氏は三井物産株式会社に入社後、食料?発電?財務などの分野での経験を経て、現在は同社食料本部のシニアプロジェクトマネージャー及び東京大学未来ビジョン研究センターの客員研究員としてご活躍されています。以下、トークショーの様子をまとめました。

<エシカル、ESG、SDGsの関係性>

まず、「エシカル」とは何かというところから一緒に考えてみましょう。エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費行動を指します。近年はエシカルに加え、SDGs(Sustainable Development Goals)やESG(Environment, Social and Governance)という言葉がよく聞かれるようになりましたが、これらの用語の関連性は何だと思いますか?

答えは、それら全てのゴールが「サステナビリティ」であるということです。ESGやSDGsはサステナビリティを達成するためのアクションであり、これらの基盤となる精神が「エシカル」だと僕は捉えています。

<生産から消費まで_バリューチェーンにおける課題>

僕が東京大学未来ビジョン研究センターで取り組んできたのは、コーヒー、カカオ、パームオイルなどの農産物のバリューチェーンにおける課題と解決策の整理です。バリューチェーンを「生産」「ビジネス」「消費」という3段階に分け、各段階の課題点と解決策について研究を行いました。

一連の研究を踏まえて、皆さんにお伝えしたいポイントは以下の5つです。

  1. サステナブル認証品だけでは解決しない
  2. 児童労働は無くなっていないとのデータあり
  3. 生産者はとてもシンプルである
  4. 再生農業などのサステナブル農法は効果がある
  5. 多くの消費者は利己的であること

中でもギャップを感じた点は、僕らが環境問題について議論している一方で、生産者にとって「生物多様性」や「気候変動」は(直接的な影響を受けてない生産者には)遠い話であるということです。彼らにとって重要なことは、今を生きるお金を得ることであり、生活費を稼ぐために森を切り拓いて農作物を育ててしまう現実があるのです。さらに、生産者は自分たちが作った農作物がどのように消費されているのか知らず、消費者も生産者の現状を知らない?知ろうとしていない、という情報の非対称性も深刻な課題の1つです。その上残念なことに、消費者の社会問題への意識と実際の消費行動はなかなか一致しません。環境に配慮した消費行動ができるのは、環境問題に意識が高いごく一部の人に限られてしまうため、世の中の大多数にどのようにアプローチしていくかが今後の課題だと言えるでしょう。

<課題解決のために「誰」が「どのように」行動していくべきか>

これまでに述べてきた諸課題とその解決策は皆さんも聞いたことがあるものが多かったかと思います。しかし、そうした課題を個別に解決していくニッチな取り組みに留まらず、社会全体にインパクトある形で変革を実現していくためには、「誰」が「どのように」変革するのか、それをどのようにインパクトのある形で実現できるのか、という観点が大事だと考えてます。

その一環として、今日は「エコシステム?オーケストレーション」という考え方を皆さんに紹介します。これは簡単に言うと、ビジネスエコシステムにおいて中心的な役割を果たすことができる商社のような企業は、生産者と消費者の間に立つ存在として、それぞれの特性や文化的背景を理解し、両者を結びつける能力と役割期待を備えています。したがい、我々のような商社には、そのような能力をいかんなく発揮し、イノベーション理論のプロセスに則ってサステナブルなシステムへ変革をリードし、エコシステムを積極的にオーケストレートしていくことが求められていると考えます。この変革モデルを基盤に、ビジネス?行政?NGO?金融機関など様々な立場のステークホルダーを繋ぎ、持続可能な社会の実現のための様々なネットワークを形成し、それらを連携して機能させていくことこそが社会の変革を導くのだと僕は信じています。

では、今回の講演のタイトルである「エシカル消費とビジネスは両立するのか?」について答えは、「両立にチャレンジします!」という意気込みです。できるできないの話ではなくて、両立させるための方法を考えて動くことがビジネスの役割ですからね。

第2部 「たふえね」メンバーによる関口氏へのインタビュー

Q.エシカルマーク(認証マーク)をつけるためには厳しい基準が設けられていると聞きました。小規模農家はその審査を突破するのが難しいという課題がありますが、ビジネスの立場からどのような支援が可能でしょうか。

A.とある商品のプロジェクトにおいては、小規模農家を支援する現地パートナーと組んで小規模農家に足を運び、農業技術の指導をしながら、生産物を我々が買い取るという仕組みを今作り始めているところです。生産者とバイヤー、NGOなどと連携し、大きなネットワークで支えていく体制を整えることが課題解決に繋がると考えています。

Q.エシカル商品に対して懐疑的な意見も多く聞かれますが、そのような意見を変えるにはどのようなアプローチが必要だとお考えですか。

A.興味がない人、否定的な人をどう動かしていくかが今後重要な課題ですよね。そのためには、消費を「楽しんでもらう」ことが重要だと考えています。「エシカルだから買う」ではなく、「楽しく?美味しく?オシャレに」消費した結果がエシカルだった、という体験を生み出していきたいです。また、悪質な生産現場には森林伐採や児童労働などの問題が0ではないですが、やっぱり消費者は、辛い現場を見た上でそれを消費したいとは思わないじゃないですか。もちろんネガティブな部分を知っていただくことも大切ですが、エシカルな取り組みから生まれた商品を、楽しんでポジティブに受け取ってもらえるような工夫をしていけたら良いなと思います。

Q.東京外国語大学での学びが活きた経験はありますか?

A.僕にとっては難しい質問ですね(笑)。僕は入社時に、「とにかく色んなことに挑戦したい!」という熱意はあっても、食料や環境問題について特に詳しかったわけではありません。これまで企業に勤めてきて感じたことですが、企業が大学を卒業したばかりの学生に求めているものは専門的な知識よりも、興味分野への熱意や関心、それらの興味を基にどのようなことを何のために学んできたか、何に取り組んだか、をロジカルに説明できる力です。学生の皆さんは、今何か成果を挙げなきゃ、と気負う必要はなくて、とりあえず今興味のあることを一生懸命勉強するのが1番良いのではないでしょうか。熱意を持って何かに取り組む姿勢は今後皆さんの背中を押してくれると思います。

イベント情報

【たふえね×東京外国語大学OB】地域の声で紡ぐ未来~環境課題の今~

「持続可能なバリューチェーンとわたしたちの未来~コーヒーとチョコレートの視点から~」

日時:2025年6月16日(月)

場所:東京外国語大学 学生食堂 円形広場

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本記事に関するお問い合わせは、以下にお願いします。

広報マネジメント?オフィス(窓口:広報?社会連携課)
koho[at]tufs.ac.jp([at]を@に変えて送信ください)

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