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中東地域への関心を原点に、大学での学びと課外活動を積み重ねてきた国際社会学部中東地域4年の金子瑠香さん。ペルシア語専攻としての視点を持ちながら、アラビア語圏であるヨルダンへ1か月間の日本語教育派遣に挑みました。異文化の中での授業実践、日本文化イベントの企画、そして現地の人々との温かな交流――。短期派遣とは思えないほど濃密な日々を過ごした金子さんに、派遣を志した理由から現地での学び、そして今後の展望までを伺いました。


──本学への入学を志したきっかけを教えてください。

高校生の頃、ISISやターリバーンに関するニュースを目にしたことがきっかけで、その背景にあるイスラームの教義や解釈について深く知りたいと思うようになりました。そこから中東地域専攻を志望しました。
アラビア語やトルコ語にも興味はありましたが、世界史の資料集で見たイランの古都イスファハーンの写真に強く惹かれ、「いつか訪れたい」という思いからペルシア語を選択しました。

──大学ではどのような学びや活動をしていましたか。?

国際社会学部?中東地域ペルシア語専攻に所属し、主にイランの視点から国際関係を学びました。2年次にはイスファハーン大学で1か月の語学研修を経験しました。授業では、ペルシア語専攻として古典詩やニュース記事の翻訳、国際社会学部として開発学や移民学などを履修しました。課外活動ではフライングディスク部MAXに所属し、2~3年次にはキャプテンを務めました。留学を経て復帰した4年次の秋には、後輩たちが夏の関東予選を突破してくれたおかげで、全日本大学アルティメット選手権大会にも出場できました。

アルティメットの全国大会で仲間と円陣を組む様子
予選を勝ち抜いてくれた仲間と、アルティメットの全国大会にて。

──今回の派遣に興味を持った理由は何でしたか。?

派遣場所と活動内容の両方に強く惹かれたからです。まず、ヨルダンに1か月滞在できる点が魅力でした。イラン人とアラブ人は、言語?宗派?生活様式?国際情勢の捉え方など多くの点で異なります。ペルシア語圏だけでなくアラビア語圏でも生活し、より俯瞰的に中東を理解したいと考えていました。また、国内外のNPOでパレスチナ難民の方々と接した経験から、難民キャンプが多いヨルダンに関心がありました。アラビア語も履修していたため、実践の機会を求めていたことも理由の一つです。さらに、日本語教育にも興味がありました。大学2年次にはダリー語(ペルシア語に類似した言語)話者の児童に学習支援を提供するアルバイトを経験し、3年次のフィンランド留学中には、大学が企画するJapanese Language Cafeで日本語教師役として、留学生相手に日本語を教えました。帰国後は比較教育学ゼミに所属しつつ、オンラインで海外の学生に日本語を教える授業も履修しました。一方で、本格的な「日本語クラス」で日本語を教えた経験はなかったため、プロの日本語教師の授業をこの目で見てみたいと感じました。

アンマンの夕暮れの写真
アンマンの夕暮れ

──ヨルダン大学やアンマンの印象を教えてください。?

アンマンは周辺諸国の都市と比較しても治安が良好で、交通インフラもある程度整備されており、生活しやすい街です。ダウンタウンなどで感じられる中東ならではの活気溢れる雰囲気と、近代的で暮らしやすい環境を併せ持つ点が、この都市の魅力だと感じました。
ヨルダン大学はヨルダンで最も歴史ある高等教育機関です。本学の日本語コースは外国語学部の第三外国語必修選択科目として、JICA長期隊員により授業が行われてきました。日本語学科新設に向けた動きもみられます。

要塞の写真
アンマンにあるローマ帝国の要塞

──派遣中はどのような活動を行いましたか。?

ヨルダン大学の日本語クラスでは、Level1~3の計4クラスを担当し、授業の見学?実施および会話テストの作成?評価を行いました。派遣期間前半は長期隊員の授業を見学し、スライド作成や授業運営の方法を学びました。後半には長期隊員の指導のもと実践させていただく機会を少しいただきましたが、クラスごとの進捗状況の把握や授業の時間配分の管理に苦労しました。また、会話テストでは、学生全体のバランスを考慮しつつ、減点基準を基に学生一人ひとりに相対的な評価をつける難しさを実感しました。

教鞭をとる金子瑠香さんの写真
日本語クラスの教鞭も取らせていただきました
記念写真
授業最終日に、ヨルダン大学日本語クラスの生徒たちと
(写真2列目右が筆者、3列目左が長期隊員)

加えて、JAAJ(JICA帰国同窓会)で開講されている日本語クラスにも積極的に参加しました。現地の日本語教師の授業を見学して学びを得たり、授業中に学生に対して書道の指導を行ったり、学生に日本語ネイティブとの会話機会を提供したりしました。さらに、ヨルダン大学とJAAJにて、日本文化イベントを企画?運営しました。両イベントでは、日本文化に関するクイズを利用したビンゴ大会と、巻き寿司作り体験会を実施しました。クイズは得点制ではなくビンゴ形式を採用し、日本文化の知識の有無に関わらず誰もが楽しめるよう工夫しました。巻き寿司作りでは、巻簾、海苔、酢飯、寿司の模型、数種類の具やガリなどを用意し、「自分で具を選び、自分で巻く」体験を通して、楽しい思い出と共に日本文化を記憶に留めてもらうことを目指しました。実施前からイベントを楽しみにする声が多く寄せられ、実施後には参加者の満足した表情を見ることができたことが、自身の達成感に繋がりました。

巻き寿司作りを体験する参加者
ヨルダン大学にて日本文化イベントを主催。30人ほど集まり、教室はいっぱいになった
記念写真
JAAJにて日本文化イベントを主催
記念写真
東京外大からの留学生?JAAJの学生たちと、ダウンタウンのレストランにて

業務外活動では、国内旅行を通してヨルダンの歴史や文化を学びました。ヨルダンは、石器?鉄器時代から古代ギリシア?ローマ、イスラーム諸王朝を経て現代に至るまで、多くの歴史が積み重なってきた大変魅力的な国です。移動する先々で様々な時代の歴史的建築物を目にすることができました。

アカバの海岸からの景色
対岸にはイスラエルとエジプト、陸地の先にはサウジアラビアが広がる、アカバ近郊の海水浴場

──印象に残っている出来事はありますか。?

活動を通して、ヨルダンの温かいもてなし文化を肌で感じました。JAAJの教師や生徒たちはアラブ料理レストランやシーシャカフェ、アンマンの夜景を一望できるカフェ等に連れて行ってくれ、この国の生活に触れる機会を与えてくれました。中でも、帰国直前にJAAJの教師と生徒が開いてくれたヨルダン料理会が特に印象的でした。ヨルダンの家庭料理を堪能できたことに加え、「イベントを開いてくれたお礼に」「ルカ先生のために」と皆で準備してくれたその気持ちが何よりも嬉しかったです。さらに、スーパーのスタッフなど日常生活で出会う人々から「Welcome to Jordan」の言葉を何度もかけてもらった上、アンマンのアルティメットチームの練習に参加した際も、初対面にも関わらず温かく迎え入れてもらいました。滞在中、アジア人に対する偏見を全く感じなかったとは言えませんが、こうした人々の温かさに触れ、ヨルダンは私にとって必ず戻ってきたい国の一つとなりました。

歓迎会のメッセージボード
JICA協力隊の皆さんが開催してくれた歓迎会にて

──苦労したことや工夫したことはありますか。?

派遣期間が正月休みやテスト期間と重なったため、本来活動の主軸とすべきヨルダン大学での活動日数は限られていました。しかしその分、JAAJでの活動と組み合わせることで、密度の濃い1か月を過ごすことができたと感じています。また、今回の短期派遣者は例年の2名と異なり私1人であったため、活動中に同じ立場で相談できる相手がいない状況でしたが、周囲のサポートを受けながら柔軟に活動することができました。
また、現地に1~2年間滞在している日本人留学生やJICA長期隊員が、アンミーヤ(現地方言)を使いこなして現地社会に溶け込んでいるのを目の当たりにし、1か月という短い滞在の中では同じ水準に至れないことにもどかしさを感じました。しかし、その中でも日々の暮らしの中で人々の価値観や暮らしに目を向け理解しようと努めることで、ヨルダンの文化を多く学ぶことができました。?

──長期派遣隊員との関わりについて教えてください。

?長期隊員には活動面?生活面の両面においてお世話になりました。活動場所の難民キャンプを案内してくれた方や、JAAJのイベントに協力してくれた方々には感謝しています。中でも、ヨルダン大学に派遣されている長期隊員(※外大の卒業生や大学院生)には、日常生活から活動業務に至るまで様々なことを教えていただきました。また、誰かの部屋に皆で集まって夕飯を囲んだり、一緒にバスケをしに行ったりと、楽しい思い出も作ることができました。
さらに、今回の私の着任?退任時期はそれぞれ長期隊員のそれと被っていたため、私も長期隊員と共に歓迎会や送別会に招待していただきました。帰国報告会や大使館表敬訪問に参加する貴重な機会もいただきました。?

──今回の経験を今後どのように活かしたいですか。?

日本語教育の活動を通して、日本文化が海外でいかに関心を持たれているのかを改めて実感しました。今回出会った人々とのご縁を大切にしながら、今後も海外で積極的に現地の人々と繋がっていきたいとの思いが強まりました。
また、今回のヨルダン滞在は、中東地域専攻としての大学生活の総括となる経験であったと捉えています。この春より社会人となりますが、就職先でも中東を含む様々な地域のインフラや産業に携わることができればと考えています。今回の滞在を含め、大学生活を通して得た知見を、今後も活かしていきたいです。

──最後に、日本語教育派遣やJICA海外派遣事業に興味がある方へメッセージをお願いします。?

本派遣事業は、JICAによる充実したサポートのもと、整った環境下で活動できる貴重な機会です。自身の学びを実践につなげたい方には、是非積極的に挑戦してみてほしいです。


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